第11回日本精神・心理領域理学研究会学術大会

大会長挨拶
第11回 日本精神・心理領域理学療法研究会学術大会
大会長 加賀野井 聖二
医療法人おくら会 芸西病院

こどものメンタルヘルスと社会支援~理学療法士に求められる支援を探る~
現在、子どものメンタルヘルスの現状において、世界の児童・青年のうち約20%が精神障害や精神的な問題を抱えていると報告されています(WHO 2012年)。特に発達障害の数は増加傾向にあり、わが国においても2020年には約30万人、2023年には約35万人となっています。
また、発達障害に関連する二次障害を発症している割合は約40%といわれており、不登校(令和3年度には小中学生の不登校は約24万人となり、9年連続で増加し過去最多となりました)や不安障害、うつ病、自傷行為、反抗挑戦性障害、緘黙、ゲーム依存、睡眠障害などを発症していることが指摘されています。さらに、2022年には自殺した小中学生と高校生が512人(暫定値)と、1980年以来過去最多となり、子どもの自殺は増加傾向にあり、問題が深刻化しています。
このような状況の中、平成29年度より「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進・支援事業」が立ち上げられました。この事業では、精神障害の有無や程度に関わらず、誰もが安心して自分らしく暮らせるよう、医療・障害福祉・介護、社会参加(就労など)、地域の助け合い、普及啓発などの教育が包括されたシステムづくりが求められています。理学療法士もその一員としての活躍が期待されているところです。
現在、理学療法士として発達障害を中心に児童・青年期の子どもに臨床現場で関わる機会は少なくありません。特に精神科領域で働く理学療法士はその機会が多いと考えられ、対象者の心身に対するアプローチのみならず、家族への対応や教育機関・行政との連携、さらに就労への支援を見据えた対応が必要であると考えられます。そのため、今後は積極的に包括ケアシステムへ参加することが重要です。
本学術大会では、こうした現状を踏まえ、主に2つの特別講演とシンポジウムで構成いたします。特別講演では、高知大学医学部寄付講座 児童青年期精神医学特任教授の高橋秀俊先生と、高知健康科学大学学長の宮口英樹先生をお招きし、ご講演いただく予定です。高橋先生には児童精神科領域の現状と対応について、宮口先生には児童・青年期の子どもへのアプローチ(コグトレ)や司法との関連についてお話しいただきます。
最後に、シンポジウムでは、児童・青年期の子どもへの就労支援に取り組んでいる病院の活動や、司法領域で活動する理学療法士、さらに地域づくりに取り組む作業療法士の方々にご登壇いただき、意見交換を行います。これにより、理想的な支援の在り方や、理学療法士に求められる支援について議論し、一定の方向性を示すことができればと考えております。