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大会長挨拶

テーマ「明日から使える精神・心理的理学療法アプローチ」
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第8回 日本精神・心理領域理学療法研究会 学術大会
​大会長 小枩 武陛(大阪河﨑リハビリテーション大学)

 理学療法士の専門性が求められている中で、日本理学療法士協会には12分科会8部門が設立されております。本研究会は歴史の浅い領域の小規模集団ですが、他の伝統的な分野と同様に、理学療法において重要な役割を担うものと自負しております。

 

 運動が身体に及ぼす影響の科学的根拠は1970年代に報告され始め、1980年からは海外を中心に運動の精神・心理面への効果が検証されるようになりました。1990年代には社会的・学生ストレスからうつ病に対する運動の効果や2000年代では、認知症に対する運動療法の効果に関する研究が報告されるようになりました。より一層、精神・心理面を踏まえた運動療法の効果も幅広く示されています。現在の理学療法は、疾患患者の治療的リハビリテーションのみならず、疾患予防、高齢者のレクレーション、スポーツ選手に対する医学的アプローチ、さらには一般人の健康維持・増進など多様な領域をカバーしています。精神・心理領域は、これらのすべての分野に関与しますが、残念ながらその役割が周知されているとは言えません。とりわけスポーツ分野への貢献度は、認知度が低いのが現状です。

 また、厚生労働省では5代疾病として「ガン、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患」を指定しております。ガン、脳卒中、急性心筋梗塞を発症してしまう原因には糖尿病が深く関わっていることはご存知の通りですが、それよりもっと根底には精神疾患が関係していると私は捉えています。精神医学は予防医学の最前線に位置しているとも考えられます。我々は精神疾患の発症の予防に適度な運動が有効であるという、当たり前とも考えられる専門的な科学的知見から考えていきたいと思います。

 そこで本研究会では、スポーツ傷害・スポーツ障害へのリハビリテーションと予防医学への精神・心理の知見の応用をコンセプトとした学術集会を開催し、健康な社会に貢献したいと考えます。テーマは「明日から使える精神・心理的理学療法アプローチ」とします。①運動器・スポーツへの精神・心理領域の応用、②予防医学への精神・心理領域の応用を2本の柱とし、③身体運動と脳機能の基礎的研究の成果を組み入れ、これら三つに有機的な相互関係を持たせながら、理学療法における精神・心理領域の役割を包括的に捉えたいと考えております。

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